2022-01-21

インドに伝わるヨガの太陽礼拝・ヨガ行者からのおくりもの

『太陽礼拝』、サンスクリット語で『スリヤナマスカーラ』は、ヨガのアーサナ(ポーズ)の準備として、毎日行うべき練習として知られています。

6~8個の動きでつながる流れるようなシークエンスは、前屈と後屈をバランスよく繰り返し、体を温め、体の柔軟性や、体幹や四肢の強さを与え、ヨガのポーズをとるための準備となる練習。

筋肉や関節の運動だけでなく、呼吸を深め、内臓へのマッサージ効果もあり、消化器系、肝・腎機能を刺激、ホルモンバランスを整える、など、体を元気にしてくれます。

体中に「気」が巡り、鬱々とした気分も澄み渡り、スッキリ・クリアに。まさに、内なる太陽を輝かせ、心身に熱と光を与えてくれるプラクティスなのです!

そんな素晴らしい効果が満載な太陽礼拝、現代のヨガの基本の練習となっています。多くの先生が、初心者の練習として、まずおすすめするのではないでしょうか?

この太陽礼拝は、古代から様々な文化で、それぞれの形で行われていた儀式ですが、それが体を使うヨガのプラクティスになったのは、割と最近のようです。

今回は、インドのヨガの師より学んだ、太陽礼拝についてのよもやま話をお伝えしたいと思います。

古代の太陽礼拝

天照大御神・・・言わずと知れた日本の神さまも太陽の神さま。

マヤ、エジプト、ギリシャ、ローマ、チベット、ヒンドゥ・・

太陽は、全ての生き物を目覚めさせ、生命エネルギーを与える最も重要な役割を担い、

多くの文化で共通して、最も崇高なエネルギーの象徴であり、神として崇拝されていました。

イエス・キリストも、太陽礼拝の儀式を日課としていたそうです。

ヨガで最も神聖な時間は、日の出前の45分間。「ブラフマムルタ」と呼ばれ、瞑想に最も適した時とされます。

いろいろな生き物が目を覚まし、エネルギーが混ざり合うその前の、最もピュアな空気の時間。

現代ヨガの太陽礼拝

特別な形式の太陽礼拝の原型を作ったのが、Samarth Ramdas Swami(1608-1681)という当時の偉大なヨガマスターの一人。瞑想によってもたらされたものだといわれます。

その影響を受け、インドの王様(1868-1951)がそれを受け継ぎ、太陽礼拝に関する本を記したことで、世に広まったと考えられています。この王様、ボディビルダー級の強靭な肉体の持ち主だったとのこと。

(※王様の名はBhawanrao Shriniwasarao Pant Pratinnidhi、著書”The Ten Point Way To Health : Surya Namaskar”) 

19世紀、体を使うハタヨガが主流になり、多くのグルやマスターによって、ヨガのシークエンスとしての太陽礼拝が世界中に広まりました。

ヨガは本来、朝に行うスピリチュアルプラクティスであり、太陽に礼拝することが一日の始まりでした。

時代の流れと共に、多くの人にとって、『太陽を崇拝する』という行為を受け入れるのは難しくなり、身体的なプラクティスとしてハタヨガに取り込まれた、という背景もあるようです。

その後、各地にヨガマスターが登場し、それぞれの形で発展し、太陽礼拝のバリエーションも増え、ジャンプバック、足を高く持ち上げて振り下ろす、など、強めのスタイルも登場しました。

体に負担の少ないリラックスバージョン、椅子バージョン、など、今では数えきれないほどの形式があります。

「太陽礼拝は、アーサナの準備として体を動かす練習であり、エクササイズではないことを忘れないで。ケガを避けるためにも、自分に適した形を受け入れ、心地よいやり方を選ぶことが大事です。」

これが伝統的なヨガを教える師の言葉。

古代のヨギーが与えてくれた宝物!

信仰の儀式から、身体的プラクティスとして受け入れられた太陽礼拝ですが、ヨギー(ヨガマスター)によってもたらされ、王によって有名になり、世の中に広がりました。太陽への崇拝するヨギーからの素晴らしい贈り物です。

7~8個のポーズを繰り返し、12のポーズを繰り返すシークエンスは、前屈、後屈、ストレッチ、筋力トレーニング、柔軟、活性化、これがバランスよく含まれ、体の強さと柔軟性を高めます。

たくさんの奇抜なポーズをしなくても、太陽礼拝を行うだけで、176個の関節を動かし、すべてのチャクラ(「気」の集まるセンター)とすべてのプラーナ(「気」の種類)を刺激するので、知らないうちに気分は上々!

インドで学ぶ伝統的なヨガは、体の動きを、筋肉・関節という解剖で説明することはありません。(※解剖学は学びます)

むしろ、チャクラ、呼吸、マントラ、を意識し、「微細体」といわれる目には見えない部分、思考や感情を生み出すエネルギーに集中します。

ケガをしないために、体の使い方は注意が必要ですが、ダイナミックな動きの中で、エネルギーの流れを感じ、リラクゼーションの感覚に気が付くことが一番重要です。

前屈するときの脱力感、後屈するときのみなぎるパワー、血流の変化、手足の強さ、呼吸の広がり、おなかの収縮、マットに触れる感覚。

どこにいても、自然をイメージして、大地に触れ、大空を感じ、太陽に感謝するように礼拝を捧げることができたなら、意識は肉体レベルを超え、メンタル、スピリチュアルなレベルに到達し、無限大に広がります。

太陽礼拝の効果

・筋肉、関節、組織を強く、柔軟にする

・ホルモンバランスを整える

・血流を促し、コレステロール、むくみ、冷え、慢性疲労を改善

・消化機能、インスリンバランス、便秘を改善

・チャクラ、プラーナを刺激し、体を目覚めさせ、エネルギーを高める

・体温を上げ、太陽のエネルギーを体にもたらす(自然の生命力を呼び込む)

・自信を与える

・メンタルブロックを外す

・宇宙のエネルギーにつながる

最強ですね!

太陽礼拝の効果を最大に受け取る方法

伝統ヨガが教える太陽礼拝の基本は、【1日を最高に過ごすための朝の儀式】

ヨガの練習は朝に行うことが最も望ましく、夕方に行うよりも何倍も効果的といわれています。

【理想的な太陽礼拝】

・午前3:30以降、いつでも始めてよい。

・朝食前に行うのが最もよい。

・朝起きて、水を一杯飲んでから行う。

・朝日、または夕日の光を浴びて肌で感じる(この光にたくさんのプラーナが入っている)

・日没後はやらない。(アクティベートする時間ではない)

・3セット行う

3セットを行う意味は、

ONE for Body , ONE for Mind , ONE for Spirit

ボディ、マインド、スピリット、それぞれに捧げる礼拝。

①ボディに捧げる:ダイナミックな動きでエネルギーを動かす

②マインドに捧げる:体と心の架け橋となる呼吸に意識を向けて、エネルギーを感じる

③スピリットに捧げる:マントラを唱え、感情をのせてゆく…..

マントラが加わると、さらに特別なプラクティスになります!

パワフル&ヒーリング!太陽礼拝のマントラ 

太陽礼拝のマントラ、私が最初に学んだ場所では、壁に貼ってある12のマントラを見ながら、ポーズが変わるごとにチャンテイングをするので、息苦しいやら、どのマントラだかわからないやら、初めのうちはとっても苦手でした。

心で唱えるチャンティングは  

ア~ メンドクサー ナマハー ・・・・。。。

でも、ある時お友達が、「この音がチャクラに響いてエネルギーを浄化するんだ」と教えてくれました。

そう聞くと、唱えないいわけにはいかない!という気分になって、まじめに唱えたものです。

今でもこのマントラを聞くと、当時の朝の風景が蘇ります。

この太陽礼拝のマントラ、12の神々の名前を唱えます。

神々の名前で表しているのは、太陽のいろんな要素。

生命力を与える太陽へ、言い表せない大きな想いを、様々な表現で称えているものだそうです。

マントラは、何千年もの間ヨギーによって唱えられ、言霊のようなパワフルな波動があります。

たとえ意味が分からなくても恩恵があるといわれ、サウンドヒーリングのように、高い波動が体と心に響き、浄化してくれるようです。意味が分かれば、さらに深い部分で共鳴することでしょう。

1. Om Mitraya namah (オーム ミトラヤ ナマハ)

  すべての友である者へ

2. Om Ravaya namah (オーム ラヴァエー ナマハ)

  輝く者へ

3. Om Suryaya namah (オーム スーリヤーヤ ナマハ)

  原動力となる者へ

4. Om Bhanave namah (オーム バーナヴェー ナマハ )

  世界を照らす者へ

5. Om Khagaya namah (オーム カガーヤ ナマハ)

  風切る者へ

6. Om Pushne namah (オーム プシュネー ナマハ)

  強さを与える者へ

7. Om Hiranyagarbhaya namah (オーム ヒランヤガルバーヤ ナマハ)

  黄金の宇宙そのものへ

8. Om Maricaye namah (オーム マリーチャエー ナマハ)

  夜明けの神へ

9. Om Adityaya namah (オーム アディティヤー ナマハ)

  地球の女神・Aditiの息子へ

10. Om Savitre namah (オーム サヴィトレー ナマハ)

  激励する者へ

11. Om Arkaya namah ( オーム アルカーヤ ナマハ)

  賞賛されるべき者へ

12. Om Bhaskaraya namah(オーム バスカラーヤ ナマハ)

  悟りへと導く者へ

そして、ビージャマントラなるものがあります。

ビージャとは、「種」のこと。

このビージャマントラはとってもパワフルで、体に強いバイブレーションを与えるのですが、その強さによって、中には眠くなる人もいるようです。

その音は

Hram ラーン

Hrim リーン

Hrum ルーン

Hraim  レイン

Hraum ラーウム

Hrah   ラハッ 

     

日本語で表すと、このような音に聞こえるのですが、

「H」はハートに、「R」は脳に響く音ゆえに、しっかり舌を巻いてRを発音します。

このビージャマントラはとってもパワフルで、その強さゆえ、中には眠くなる人もいるようです。

太陽礼拝では、12個のマントラに合わせて、この6個を順番に一つずつ組み合わせます。

Om Hram Mitraya Namaha

Om Hrim Ravaya namah

というように、Omの後に順番に加えます。

混乱しどころが満載なのですが、見ながらで十分。大ベテランのインドの先生も間違えます。笑

唱えながらが難しいときは

・12個のマントラを最初から最後まで一気に唱え終わってから、あとは動きと呼吸をシンクロナイズさせる

・心の中で唱えがら動く

でもよいのだそうです。

月礼拝、チャンドラナマスカーラ

太陽礼拝があれば、月礼拝もあります。

現代のヨガでは、全く違う様々なシークエンスの月礼拝があります。

ハタヨガに基づく伝統的な月礼拝は、太陽礼拝12のポーズに、2つ動きが加わった、14のポーズで構成されます。

ハタヨガは太陽(HA)と月(THA)のエネルギーのバランスを整えるためのトラディショナルテクニック。

太陽礼拝がスリヤナディ(太陽のエネルギーを司る体内のネットワーク)を刺激し、活力を与え、

月礼拝はチャンドラナディ(月の エネルギーを司る体内のネットワーク)を刺激し、 鎮静します。

日没後に太陽礼拝をしないのは、人間の体もリラックスしていく時間だから。

月の礼拝は、シークエンスはほとんど同じですが、より呼吸が深まり、鎮静的なものになります。

「朝に月礼拝をしてはいけないのですか?」

ヨガマスターの答えは

「どっちでもいい」

でした。(!)

ヨガは早朝が理想とはいえ、個人の特質やライフスタイルに合わせて、無理をしないことも大切。

朝であれば、だんだん調子を上げて、体を目覚めさせるために、

夜に行うのであれば、一日の緊張を緩めるように、ゆったりリラクシングに。

自然のリズムに調和したら、宇宙とつながり、すべてはうまくいく!

以上、伝統ヨガに学ぶ太陽礼拝のお話でした。

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