南インドのタミルナドゥ州、ポンディチェリー近郊の田園地帯に広がる面積約20平方キロの実験型エコヴィレッジ。インド人思想家・宗教家であるオーロビンド・ゴーシュのパートナーであったフランス人女性ミラ・アルファサ(Mirra Alfassa)によって、1968 年に設立される。世界中から人々が集い、あらゆる信念や政治、そして国籍を超え、平和と調和の下に住むことの出来るユニヴァーサル・タウン( 世界都市) を目指す。目標はヒューマン・ユニティー(人類の和合)。
南インドの洗礼。
ブッダのエネルギーに満ちた町を離れ、次なる目的地は、”世界最大のスピリチュアルコミュニティ”と言われるオーロヴィル!南の玄関口・チェンナイ空港へ降り立つと、蒸し暑い南の空気を感じ、雰囲気もガラリと変わります。建物も街も人々も、とてもモダンできらびやか。特に女性たちのサリー姿の明るい色彩が美しく、見惚れてしまいました。この日は近くのホテルに滞在し、翌日さらに南に向かいます。
「空港に近い」を第一理由に選んだ”3つ星”ホテルは、到着した瞬間、とても嫌な感じがしました。案内された一階の部屋は蒸し暑く、近所の家のテレビの音が響き、窓のない部屋にはスパイスと洗剤の混ざった匂いが充満しており、最高に嫌な感じでした。部屋の変更を希望するも、できないとのこと・・。
気を取り直すため、このホテルの “レストラン” に行くと、担当者は受付にいた若者。何食わぬ顔でオーダーをとり、調理して、受付に戻っていきました。南インドといえば、ドーサ。薄く焼いた米粉のクレープみたいな料理ですが、一口食べて、最高に嫌な予感がしました。それでも食べたのは何故だったのか?「やけっぱち」とはこの日の私のこと。
この食事が原因で、ついに「インドの洗礼」を受けることになりました。ブッダガヤでは、毎日の食事がおいしくて、屋台のスナックさえ楽しんだことに、自らの腹を過信してしまったのでしょうか。夜中、徐々に気分が悪くなり、重たく突き刺さるような腹部の痛みは増すばかり・・そして、嫌な予感は的中しました。
腹部に強烈なパンチをくらうかのような、それは強烈な破壊力でした。人間の身体機能は素晴らしく、体内に入った毒素を出すため、上から下から、大洗浄が一気に起こりました。数年前に罹ったノロウイルス感染を上回る勢いで、夜通しの浄化が続きました。(中略) 一睡もできないまま早朝になり、朝になっても真っ暗な部屋がむしろありがたく、正午に予約していたタクシーの時間まで、体を丸めてただじっと回復を待つのでした。とほほ
迎えのタクシーが来て、散々だったホテルから脱出すると、強い日差しと猛烈な熱気。道路工事で、熱々のアスファルトがこの通りの道路一面に敷き詰められていました。細い道路は隅々まで熱々ですが、その上を歩くしか選択肢はありません。ビーチサンダルで私の荷物を担ぎ、黙々と歩くドライバーに必死でついてゆきます。地面からの熱気とアスファルトの匂い、スニーカーの底が熱で溶け、アスファルトが張り付いてくる感覚・・
最後の最後まで、極めつけの大打撃に撃沈し、チェンナイを後にしました。
あこがれのオーロヴィル。
タクシーに乗り、後部座席でグッタリと横になると、涼しい車内は意外にも極楽気分。すでに疲れ果てたおかげか、夢と現実の間を彷徨い、夢見心地で運ばれること3時間。ドライバーに起こされ、目を覚ましたら、そこは森の中の別世界でした。ついに待望のオーロヴィルです!
壮大な土地の中に、様々なコミュニティがあり、それぞれにゲストハウスがあります。私は一番古いコミュニテイの一つと言われる、Aspiration community Guest House に滞在しました。右も左もわからない、誰もいない、犬が3匹こちらを見張っている入り口で降ろされ、森の中を迷うこと数分、フラフラと彷徨っていると、どこからともなくインドのおじさんが現れ、飲料水用のポットとともに、私の部屋に案内してくれました。本来の案内役である責任者はもう帰ったとのこと。
旅行者のためのゲストハウスのほか、住⺠の家があり、もともとこの土地に暮らしてきたインド人と、オーロビルに移り住んだ「オーロビリアン」とよばれる外国人が、共にひとつのコミュニティに暮らしています。中心には共用のダイニングがあり、毎日3食提供され、住⺠と旅行者が一緒に食事をします。(食事代は宿泊費に含まれます)創立当初からある原始的な建物は、非常にシンプルでトイレやシャワーが共用。私はトイレシャワー完備の現代的な部屋を選びました。
部屋につくと、緑に囲まれた心地よい空間でした。本来ならばさっそく探検したいところですが、時間厳守のディナータイムまであと数時間。窓を開け、森の空気をとりいれて、ベッドに寝そべったら、最高の癒しのひととき。一瞬で眠りに落ちていました。
時間になり、ダイニングに出向くと、⻑期滞在の⻄洋人の旅行者、住⺠であるインドファミリーがすでに大きなダイニングテーブルを囲んでいました。旅行者はアメリカ、スウェーデン、フランス、カナダから、ほとんどが2~3ヶ月と、月単位の滞在でした。私はたったの5日間、スケールの違いを実感しました。昨日の食中毒でおなかはまだまだ不安定のため、少しだけ食べてこの日は就寝。
ぐっすり眠ていた早朝5時、まさかの、まさかまさかの、大音量の音楽が鳴り響きました。実は、この場所はオーロヴィル中心部からはかなり離れた端の方に位置しており、一般の地区との境目で、すぐそこにはヒンドゥ寺院があり、神にささげる宗教音楽は欠かせないのです。つまり、例の爆音問題は、ここでも免れないということです。広大な森に囲まれるオーロヴィルのなかで、「有名なフレンチベーカリーが近い」という理由だけで決めた私が甘かった….
朝食に行くと、昨日のメンバーたちがいました。隣に座ったアメリカ人のマダムが興味深いドリンクを持っており、それは何かと尋ねると、オーロヴィル内で作られたハーブドリンクでとてもおいしく、すぐそこのスーパーで売っていると教えてくれました。毎晩フリーの映画上映があること、おいしいカフェのある場所など、いろいろな情報を教えてくれました。少し元気になったので、この日はビジターセンターに行くことにしました。
ちなみにゲストハウスでの食事は、インド人と西洋人の好みをとりいれているのか、激辛カレーと白いライス、濃い味のついたパエリア風ライス、パスタとサラダ、など、ほとんどが炭水化物で、野菜の料理は激辛でした。辛い物が苦手だったり、朝は近所のおしゃれなベーカリーに通ったので、3食フリーで食事つきでしたが、結局あまり利用しませんでした。
快適に過ごすために
コミュニティ責任者の女性に呼ばれて、オーロヴィルでの過ごし方の説明を受けました。まずは、オーロヴィル内で使用する「オーロカード」というプリペイドカードを作ります。各種支払いやイベントの参加など、オーロヴィル滞在には必須のカードになり、コミュニティに属したゲストハウスに宿泊しないと作れないものになります。近くの銀行まで一緒にカードを作りに行き、近所のスーパーなども案内してくれました。
数あるオーロヴィルの見どころの中でも、中心にある瞑想ホール、マトリマンディールは必見です。外観を眺めるのも、内部を見学するのも、ビジターセンターにて予約が必要で、内部の見学は早くて2-3日後のなるようで、まずはビジターセンターを目指すべし!と念を押されます。
広大なオーロヴィルでは、移動はバイクか自転車が便利で、レンタルの手配もゲストハウスにお願いできます。バイクに乗る自信がない私は、レンタサイクルにしたのですが、せっかくゲストハウスまで届けてもらった自転車は、サイズが大きすぎる上に、チェーンが外れてしまいました。
自転車屋のおじさんのバイクの後ろに乗せてもらい、おじさんの店へ行くことになりました。マウンテンバイクは苦手なくせに、試し乗りして見事に転倒。片隅に置いてある小さいママチャリを希望すると、パンク中とのことでしたが、転んだ私を不憫に思ったのか、パンク修理が始まりました。一生懸命に取り組むおじさんを見守り、インド時間が流れます。仕事熱心で優しいおじさんでした。
待つこと小一時間。ママチャリを入手したところで、帰りは自力で来た道を戻ります。大雑把な道の説明を受けた後、「行けばわかる、間違える人はいない!」と言われ、その気になって出発すると、最初の分かれ道から迷いました。何人もの道行くインド人に聞いて、最後は通りすがりの原チャリのおじさんの誘導で、ガタボコ道を必死についてゆき、なんとか帰ってこれました。
朝から不運な自分へのご褒美に、朝マダームに教えてもらった噂のドリンクを買うため、近所のスーパーに行きました。そのスーパーは、食料や日用品のほか、オーロヴィル産のおみやげを買うにも人気のお店だとのこと。ドリンクコーナーへ行くと、魅力的なヘルシードリンク各種が並んでいます。いかにも体に良さそうな響きに惹かれ、「コンブチャ」なるものを買ってみました。そのほか、オーガニック石鹸&虫よけスプレーを選び、わが心のテンションが上がってくるのを感じます。
店を出ると、暑い日差しに冷たいドリンクが気持ちよく、さっそく歩きながら蓋を開けると、まさかの炭酸飲料でした。沈殿物を見て、思い切りボトルを振っていた私は、プシャーーーー!と勢いよく吹きだす茶色い液体を頭から浴び、一人優勝祝いをするハメになりました。🍻
発酵によって炭酸になるという「KOMBUCHA」は、日本の昆布茶ではないのです!ビックリしたのは不意打ちの噴射だけではなく、その味です!新しいような、知っているような、不思議な味ですが、ビタミン・ミネラルが体中に染み渡るような、忘れられない衝撃的なおいしさでした~!人生、山あり谷あり。
オーロビリアン
そんなこんなで、予定は大幅に遅れ、すでに午前はほぼ終わり。この広大なオーロヴィルをこの調子で移動するのかと不安がよぎる中、ダイニングにランチをとりに行くと、「オーロビリアン」であるイタリア人のおじ(い)さんに出くわしました。彼は「ニューカマー」と呼ばれるいわゆる新人の試用期間のような状態とのこと。どのようなシステムなのかを教えてくれました。
オーロビリアンになるためには、初めはボランティアをしながら住んで、この生活が自分に合っているのかを見極める期間を過ごします。その後、数人のメンター(指導者)がつき、彼らの指示のもと様々な仕事をし、いろんなコミュニティに属して生活する期間(一年半ほど)を経て、7人のオーロビリアンにインタビューを受け、住民となるのに適した人材かどうかが審査されます。
晴れてオーロビリアンになると、みな仕事を持ち、一年で一定の金額が支給されます。決して多くはない金額ですが、住居や食事は提供され、生活に必要なものは安価で入手でき、日常生活にはほぼ金銭のやりとりは必要ありません。金銭ではなく労働の奉仕でエネルギーを循環させるシステムは、見返りのない奉仕を捧げる、というカルマヨガの精神に基づいています。(うろ覚え)
とはいえ、コミュニティ全体にお金の流通は必要で、それを賄うのが旅行者の観光マネーとなります。旅行者にしてみると、インドにしては全体的に少しお高めな価格に感じるためか、コミュニティのコンセプトに対する批判も、残念ながら少なくないようです。
意外と少ない?良質ヴィーガンのお店 アイス屋さんの不思議なスイーツ ゲストハウスのダイニングにて。
おじさんに午後から自転車でビジターセンターに行くというと、銀行に行くついでにバイクに乗せてくれることになりました。自転車こぎにも自信を無くしていたので、ありがたく便乗させて頂くと、その場所は予想以上に遠く、到底、病み上がりが自転車こいで来れる道のりではありませんでした。そのうえ、ビジターセンターは土曜日ということで、聞いていた情報よりも早く閉館していたのでした・・。
そして翌日はオーロヴィルマラソン開催のため、ほとんどの施設とお店が閉まるとのこと・・。私は何しにここへ?失意でボーっとしていると、おじさんも不憫に思ったのか、翌日はオーロヴィルの隣町、ポンディチェリに連れて行ってくれることになりました。
フランス領 ポンディチェリ
フランス領だったポンディチェリは、建築も南フランスのリゾートのような雰囲気でした。庶民的な市場には色鮮やかなお花や新鮮な食材がたくさん!
植物園はとてもきれいに整備されており、全体的に裕福そうな身なりのインドの人たちがたくさん遊びに来ていました。
グレープでできてます 植物園内のトレイン ガンジー 服をきたまま海に入るひとたち
おじさんの行きつけのビリヤニのお店に連れて行ってもらいました。私には辛くて、ほとんど食べれませんでしたが、ちょっと暗い店内で味わう地元感が面白かったです。ほかのお客さんは全員インド人で、女性は一人もいませんでした。ちなみに、オーロヴィルのランチ代の半分以下の値段だとか。
ビリヤニ
この日のポンディチェリも、一人では来れない場所だったなーと、イタリアおじさんに感謝の一日でした!
マトリマンディール
ことごとくタイミングの悪い私でしたが、マトリマンディールの庭園で働くおじさんの助けにより、なんとか瞑想ホールの中に入ることができました!
この場所の土と、世界中から集めた土を混ぜて作ったレンガが土台になり、ホールの中心にはクリスタル、太陽光の加減など、計算し尽くされた設計の瞑想ホール。そのまわりには美しい庭園の数々。植物がとても元気で、常に手入れされ、愛情が注がれていることがよくわかります。野良犬たちも自由に寝転がっており、誰も追い払う人はいません。すべての生き物がリスペクトされ、調和と平和に満ちた空間でした。
瞑想ホール内部は、いくつかの瞑想ルームがあり、ヨガや瞑想が好きな人にはたまらない、非常に美しい空間です。一つ一つの部屋はチャクラカラーの光で照らされています。色はそれぞれ特有のエネルギーを持つわけですが、好きな色の空間で、自由に瞑想をすることができます。ここで深い瞑想をしたら、意識が宇宙まで届きそうな感じです。
クリエイティブな瞑想ホールを出てきた ら、自然の中で瞑想したくなりました。平和な庭園の大きな樹の下、大地に寝ころんで、あたたかい太陽やそよ風を感じていたら、とても平和な、ありがたい気持ちになりました。
今思えば、この時の体験が最高のギフトだったのかもしれません。
ショッピングの話。
オーガニックな会社 素敵な店員さん スピルリナの栽培
アーユルベーダで処方されるインド製のハーブカプセルを購入した時に、鮮やかすぎる色に度肝を抜かれたことがあり、それ以来、安心できるものを探して出会った、大好きだったオーガニックのサプリメントを、なんとここで見つけました!こんな素晴らしい環境で作っていたと知ると、効果もテキメンにあがりそうです。Aurospirulというお店で、スピルリナが有名なようです。
この隣に、楽器のお店があります。ワークショップもあると聞いて、たくさんの人が楽器で遊んでいるのが見えて、すごくおもしろそうだったのに、なぜか通過してしまった場所。後にこの場所で買ったという、たくさんのユニークな楽器たちに触れる機会がありました。雷の音や、流水の音など、自然の音が本物のように再現されるのです!サウンドヒーリングしたら楽しいだろうな。。と、後悔先に立たず!!また行くしかないですね。
ビジターセンターには、いくつかのブティックがあります。オーガニックコットンはもちろん、サリーの生地から作られたドレスなど、コンセプトから一つ一つ愛情をこめて創られた、オーロヴィルのブランドです。私はインド綿の薄くて柔らかい、風が通るような柔らかい生地が大好きで、日本であまりみつからないのですが、ここでは素敵なものだらけでした!
次回はオーロヴィル・ショッピングツアーかな?
会うべきものには必ず会える
ここに来たいと思ったきっかけは、オーロヴィルに住む韓国の女性との出会いからでした。京都のヴィパッサナー瞑想センターで出会い、奉仕者として、一緒に忘れられない素敵な時間を過ごした友人です。オーロヴィルのことは知っていたものの、住民である彼女の話が、とても興味深く印象に残っていました。自然との共存、スピリチュアルな生き方に対する意識が高い人々が世界中から集まっている場所。みな Super HumanBeing を目指して生きている。
そんな彼女とは、連絡がとだえており、会う約束はできませんでした。しかし、人生とは不思議なもので、ある夜、オーロヴィルの映画館に行き、席についてふと後ろを振り返ると、なんと彼女がそこに座っていたのです!そこそこ埋まっている館内で、たまたま空いていた席で、奇跡の再会でした!会いたいなーと思っていたら、何もしなくても会えたのです。
嬉しくていろんな人に話していたら、どうやらこれがオーロヴィルのパワーとのこと。「オーロヴィルでは瞑想をする人たちが多いから、必要なことを引き寄せる力が常に働いている。高次の意識につながるとすべてはうまくいく、という現象で、ここではよくあることだよ」と、当たり前扱いです。でも、なんだか素敵なお話です。
うまくいかないと思ったこともたくさんあったけど、それはそれで、本当はすべてうまくいっているんだな。